ソシャゲのガチャで大爆死した男
「いくつかのソシャゲを並行して遊ぶ というのはいい事ですね」
え?
ずっと携帯電話を触っていたはずの男はいつの間にかそれを仕舞っていたようだ。突拍子もない言葉に私は困惑した。
「あ、いえ。たとえ一つのソシャゲのガシャが酷い結果だったとしても、他のソシャゲにはまだ引いていないガシャがあるのですから」
そう言う男の目は遠くを見ていた。
「ソシャゲのやりすぎで近視が進んじゃったかな、はは」
消え入りそうな声を乾いた笑いで誤魔化した男は夕陽に光る頬の涙に気づいていないのだろうか。
「さて、私の愛するソシャゲを嗜むとするかな」
しばらくのち、そう言った男は携帯電話をポケットから取り出し、再び忙しなさそうにタップを繰り返し始めた。もう涙は乾いているようだ。
「…うん、あのキャラ、な」
男はぽつりと呟いたきり、何も喋らなくなった。下を向いて黙々と携帯電話を触る。煌びやかに光る液晶は物憂げな彼を明るく照らしている。